心理的負荷による精神障害の認定基準

メンタルヘルスマネジメント

心理的負荷による精神障害の認定基準

  1. 心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価法)が定められ、「強」「中」「弱」の例示が設定され、「特別な出来事」が設定された。
  2. いじめやセクシャルハラスメントのように出来事が繰り返されるものに関しては、その開始時からすべての行為を対象として心理的負荷が評価(発病の6ヶ月前の評価)されるようになった。
  3. セクシャルハラスメントは、その性質から、被害を受け指針障害を発病した労働者(以下、被害者)自身の労災請求や労働基準監督署での事実関係の調査が困難となる場合が多いなど、他の出来事と異なる性質があることから、「対人関係」とは別個に、「セクシャルハラスメント」という出来事の類型が設けられた。
  4. 発病後であっても、特に強い心理的負荷で悪化した場合は労災対象とされるようになった。すなわち、精神疾患を有する労働者が「特別な出来事」を契機に悪化した場合、悪化した部分に対しては労災認定されるようになった。
  5. これまですべての事案について必要とされていた精神科医の合議による判定が、判定に難しい事案のみに限定された。判定方法は以下の通り。
    • 主治医の診断書で認定
    • 専門医と協議して認定
    • 精神障害専門部会においける合議として認定
  6. パワハラ指針が策定されたことを受けて「パワーハラスメント」という出来事の類型が新たに設けられ、具体的な出来事として、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が新設された。

心理的負荷の強度例

強度概要
強度Ⅰ上司不在で代行、勤務形態の変化、自身の昇進・降格、部下の減少、理解者の異動、上司が替わった、同僚の昇進・降格
強度Ⅱ悲惨な事故や災害の体験、多額の損失、達成困難ノルマ、新規事業担当、80時間以上の時間外、2週連続勤務、顧客の無理な注文・クレーム、仕事の内容・量の変化を生じさせる出来事、複数名の業務を一人で担当、非正規社員の不利益、セクハラ、転勤、上司や同僚・部下とのトラブル
強度Ⅲ重度の病気やケガ(後遺症、職場復帰困難)、会社の経営に影響するような重大な仕事上のミス、重大な人身事故、重大事故、退職の強要、ひどい嫌がらせ、いじめ、暴行、上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメント

業務起因性の判断の手順

特別な出来事

  • 心理的負荷が極度なもの
    1. 生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、または永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした(業務上の傷病により6ヶ月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合も含む)
    2. 業務に関連し、他人を死亡させ、または生死にかかわる重大なケガを負わせた。
    3. 強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシャルハラスメントを受けた。
    4. その他、上記に準じる程度の心理的負荷が極度と認められるもの。
  • 極度の長時間労働(労働密度が特に低い場合は除く)
    1. 発病直前の1ヶ月におおむね160時間を超える時間外労働を行った。
    2. または、これに満たない期間に同程度(3週間で120時間以上)の時間外労働を行った。

特別な出来事以外

特別な出来事以外の評価に関しては、下記の2点を共通事項として総合評価することになっている。

  1. 出来事後の状況の評価に共通の視点
    1. 仕事の裁量性の欠如(他律性、強制性の存在)。具体的には、仕事が孤立で単調になった、自分で仕事の順番・やり方を決めることができなくなった、自分の技能や知識を仕事で使うことが要求されなくなったなど。
    2. 職場環境の悪化。具体的には、騒音、照明、温度、湿度、換気、異臭など。
    3. 職場の支援・協力等(問題への対処等を含む)の欠如。具体的には、仕事のやり方の見直し改善、応援態勢の確立、責任の分散等、支援・協力がなされていないなど。
    4. 上記以外の状況であって、出来事にともなって発生したと認められるもの。
  2. 恒常的な長時間労働が認められる場合
    • 職場ストレスとなる出来事が存在した場合
      1. 具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せず「中」程度と評価され、出来事の後に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)が認められる場合は、総合評価を「強」とする
      2. 具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せず「中」程度と評価され、出来事の前に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)が認められ、出来事後すぐに(出来事後おおむね10日以内)発病に至った場合、または出来事後すぐに発病に至っていないが事後対応に多大な労力を費やしその後発病した場合、総合評価を「強」とする
      3. 具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せず「弱」程度と評価され、出来事の前および後にそれぞれ恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)が認められる場合には、総合評価を「強」とする。
    • 職場ストレスとなる出来事が存在しない場合
      1. 出来事がなくても、1ヶ月の時間外労働が160時間
      2. 出来事がなくても、100時間の時間外労働が3ヶ月連続
      3. 出来事がなくても、120時間の時間外労働が2ヶ月連続

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